飛行ロボコンに出場した話

 この記事は、eeic2022 Advent Calendar 202120日目の記事です。

 はじめまして、eeic2022の花椒です。タイトルの通りの大会に先日(12/17〜12/19)参加してきたんですが、そちらに時間を割いた結果当初書こうと思ってた記事が仕上がらなかったため、代わりにその大会について書くことにしました(代わりにVivaldi布教しようとも思ったけど。Vivaldiはいいぞ)。今年は結局苦い経験となってしまいましたが、大会自体は思っていた以上に楽しく刺激的なものであり来年も是非出場したいと考えています。

 

飛行ロボコンとは?

 まず正式名称は全日本学生室内飛行ロボットコンテストであり、毎年大田区総合体育館で3日間に渡って行われています。例年は9月下旬に開催されています(今回はパラリンピックにおける体育館の使用のため12月開催となったそうです。来年もそうだといいんだけどな)。今回の大会の様子はこちらで配信されていました。ちなみに東京大学航空宇宙工学科の先生が実行委員を担っておりルールの策定等行っておられますが、我々東大の参加チームは例年弱いらしいです(今回は一般とマルチコプターのチームに関してはとても健闘してたと思います)。

 本大会は一般部門、自動操縦部門、マルチコプター部門、ユニークデザイン部門に分かれており、我々のチームは自動操縦部門に出場しました。ざっくり言うと各部門で機体仕様の制限や競技内容、得点方式が定められており、各チームはそのレギュレーション内で機体を作成して競技を行い勝敗は得点数で決まります(ただしユニークデザイン部門を除く)。まず予選があり、それを通過したチームで決勝を行って各部門それぞれ上位3チームが表彰されます。ミッション内容としては、例えば自動操縦部門では物資投下の他に複数の自動旋回、自動離陸・物資投下、そして最難関の自動着陸が設定されています。

 すべてのミッションを迅速かつ確実にこなせるのであればそれに越したことはないのですが(今年の一般部門の東京農工やばかった...)、実際それは難しく、厳しい制約の中でいかに得点を高くできるかが勝利の鍵となります。また得点以外にも順位争いにおいて重要な要素があり、勝利するためにはルールを詳細に把握した上でしっかり戦略を練って競技に挑む必要があります。ルール等の詳細は大会公式HPでご確認ください。

 

自チームの機体紹介

 HAPOというチームで下の写真のような機体を作成していました。主に先輩方が構造を担当し、私は電装と制御の一部を担当していました。

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図:機体写真(公式Twitterより引用)

 東大では基本的にこの機体の尾翼のように木製の骨組みに紙などを張って翼を作るのが慣例であり、発泡材を用いた翼は今回が初挑戦だそうです。木製の翼に比べて格段に丈夫なところが最大の利点でした。木製翼の場合試験飛行なんかで墜落すると各骨組みが折れて修復が大変なのですが、発泡翼の場合破損が比較的小さく、墜落を恐れず飛行試験を行うことができて非常に良かったと思ってます。まあ構造については担当外だったのでいい加減なこと言ってるかもしれません。あと後述するアビオニクス領域の重量を持ち上げられるだけの揚力を得るためにこのような非常に大きい主翼となっています。多分。

 次に今回の大会で初めてルールに追加された「アビオニクス領域」を参加チームで唯一使用していたのも本機体の特徴です。領域の寸法の制限内に飛行のための各種電子機器(動力用モータ等例外あり)が収まっておりかつその領域以外の部分の重量の制限が守られていれば、アビオニクス領域の重量は制限されないというのがこのルールの概要で、これを利用して本来重量制限上用いることが難しいRaspberryPi 3B+を搭載しました。当初はこれを用いてカメラによる自動着陸の実現を目指してたんですけどね...。アビオニクス搭載領域は写真撮る前に解体してしまったので見せられませんが、その中に搭載した電装の一部を下に示します(正直自分としてはかなり不本意で見せるのが恥ずかしくてしょうがない基板ですが...結局プロトタイピングのまま終わったし...)。解体後のため色々とない部品がありますが、本番機を見ながら適宜想像で補ってください。

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図:アビオニクス領域内に搭載した電装の一部

 写真が見せられなくて残念ですが、アビオニクス領域内に電装が収まるよう設計するのは難しく、私も構造担当の先輩も非常に苦労しました。基板は工学部13号館の作業場にある基板加工機で切削した片面基板です。基板加工は未経験でしたが、チップ部品もある程度載せられるぐらいには上手く彫れるようになりました。

 

大会の結果と考察

 前述の自動操縦部門に出場しましたが、結果は予選敗退でした。最大の敗因はラダーの損傷によって機体の進行方向を制御できず、帰還時に離着陸エリアから機体が少々はみ出してしまい、未帰還と判断されたことでした(レギュレーション上帰還の有無は点数以前に順位を決める重要な要素なんですよね)。ラダーの損傷に気づいて墜落のような形ででも無理やりエリア内に着地させられていれば点数的には一応決勝に進むことができていたと思います。

 また自動水平旋回の失敗はラダー損傷に加え、飛行状況から高度もしくはその目標値取得において何らかのエラーがあったためだと考えています。詳細は担当した先輩にあとで聞いておきます...(只今アドカレ期限5分前)

 

参加してみて

大会全体に関する所感

  • 各チーム勝利を目指しつつもこだわりを持って機体を作成しているようで、見ていて楽しかったです。最後のエキシビションで各チームの機体が飛び回っている様子は壮観でした。
  • 自動操縦部門はやはり難しいみたいで全体的に出来が微妙でした。自チームも含め。来年はうまくやれるといいな。

個人的な反省点(の一部)

 反省点が多すぎて書ききれないですが、主だったところを書いておきます。

  • 秋頃に自動着陸にカメラを使いたいという先輩の要望からメインマイコンをラズパイに変更したが、限られた準備期間の中で勝利を目指すという観点では判断が遅すぎた。
  • 夏季休業中旬の時点でAVR系マイコンである程度精度の高い姿勢推定ができており少なくとも自動旋回等は確実に行えるレベルの自動姿勢安定を実現できていたのが前述の仕様変更でほぼ無に帰したこと、そもそも個人的にカメラによる誘導や汎用OSを使ったラズパイの搭載にあまり乗り気でなかったことで開発のモチベを大幅に下げてしまった。
  • 仕様変更当初進捗が芳しくない場合は夏季休業中の仕様に戻すという話をしていたのを忘れて最後までずるずる開発を続けてしまった。

 他にも、実装しなければと思いつつ面倒がって後回しにしていた機能等が結局必要となって大会直前に実装祭りとなったこと、ルールの把握がぞんざいであったこと等反省点が多くて辛いですね...

報われない話が続いたので(追記)

 東大から一般部門に出場したチームに前述の夏季休業中に作成した自動姿勢安定用の電装及びプログラムを提供し、本番でも使っていただきました(まあ向こうの方で提供時よりかなりブラッシュアップしたこととは思いますが)。自動姿勢安定があることで格段に操縦が容易になるらしく、また大会の最後の講評でもそのこと(一般部門に自動制御を組み込むこと)について言及がなされていました。大したことではないとはいえ少しは報われた気がして嬉しかったですね。はい。

 

また来年もやりたい!(この記事のメインはここ)

 反省点が多く辛い結果に終わった大会でしたが、来年もぜひ参加したいと考えています。リベンジしたいというのはもちろんですが、今回大会に参加して飛行している機体たちを見て、やっぱり飛行機はいいなと感じたのが主な理由です。まああと同じ目標に向けて誰かと一緒に努力したり、寝る間も惜しんでもの作ったりすることによってしか得られない栄養素ってありますよね。

 まだ来年誰とどうするかは全く決まっていませんが、次回に向けたアイデアや来年以降やりたいと思ってることなどをとりあえず列挙するとこんな感じです。

  • 発泡翼にするなら今回敗退の原因となった尾翼もEPPらへんの発泡材にしたほうがよさそう。
  • そもそも空力等に関する知識のなさゆえの制御上の不手際があったので、次はちゃんと学習して臨みたい。あとできれば機体構造の設計や製作にも関わりたい。
  • 木製の骨組みを用いた翼、非常に見ていてかっこよくまたこだわりがいがありそうで是非挑戦してみたい。操縦練習や制御の試行錯誤には丈夫な発泡翼のほうが適してる気もするので適宜使い分けられたら良さそう。
  • より高度で拡張性の高い状態推定を行う。具体的には今回実装に至らなかったEKFによる状態推定等を実装したい(実はこれに関して元々アドカレ書こうと思ってたんだけど、ぎりぎり間に合いそうになくて書くの諦めた。いつか別の機会に書くつもり)。自動離着陸に関しても、ビーコンやカメラを補正のために用いて推定を主体とした実現ができるよう頑張りたい。
  • HIL、今は知識も技術も足りないと思うがゆくゆくはやってみたい。
  • プロトタイピングのまま終わらせずちゃんと基板を設計して発注までやりたい。

 他にも今回アイデアだけで実装しなかった各種機能を実装したりグダらないようPM立てたり、やるべきことは多いなあと感じてます。

 こんな感じで来年からはより製作を充実させ、その上で勝利を目指して頑張りたいと思っています。この記事を読んで飛行ロボコンに興味を持った方(特にそこの学科同期)、是非ご気軽にお声掛けください。一緒に飛行ロボットを作ってみませんか?

 

(あとがき)

本当に時間がなくて雑な記事になってしまいすみません。あと飛行ロボコンには興味あるけどお前とはやりたくないという方は気にせず自分で頑張ってください…。全学体験ゼミや工学部のゼミとして飛行ロボットを作る的なのがあります(我々のチームはこれの抽選で落ちて有志で参加した組です。最初に書いておくべき内容だったかも())。